奥様と娘さんに付き添われ、杖を突きながら身体を折り曲げてIさん(85)は来られました。去年の9月に転倒し、4番目の腰椎を圧迫骨折しました。前立腺癌と腹部大動脈瘤があります。慢性心房細動・高血圧症・高脂血症・高尿酸血症・甲状腺機能亢進症もあり、お薬を8種類も飲まれています。「腰が痛くて10分ですら座っていられなくて」。触診をすると、右腰に圧痛点があります。「これですね?」「そこが痛いんです」。伏臥位と右側を上にした側臥位で交互に治療しました。病気をいっぱいお持ちなので、ドーゼ(治療の刺激量)に心を配りました。
力士がする股裂きと胡坐をかく坐禅ストレッチ、アスコルビン酸をお勧めしました。「30分座っていられるようになって、痛みが半分くらいになりました」。現役時代は1.8リットルの焼酎を3日間で飲み、1日にたばこをワンカートン(10箱)吸っていたそうです。握力がご自慢で私の手を痛いほど握ってみせました。「身体の動きが良くなって、話もよくするようになりました」と娘さんがうれしそうにお話ししてくれました。その娘さんも職場の対人関係からストレスがかさんで自律神経の不調から不定愁訴を訴えておられ、ご一緒に治療をするようになりました。