「先生、おばあちゃんが胸が痛いって言うの。連れて行きます」。お嫁さんから電話がありました。Oさんは昭和2年2月生まれの96歳の年女。先日、コロナ禍でできていなかったお誕生日会で、ご家族に囲まれながら祝ってもらったばかりです。当院には、抱きかかえられて来られました。朝、お嫁さんが部屋を見に行くと転倒して仰向けになっていたそうです。血圧を測定すると異常はなし。会話もしっかりとしていて、舌も正常に出ます。伏臥位になってもらうため四つん這いになるようお願いすると、「胸が痛い」と言って手を着けません。胸を注意深く触診していくと、胸鎖関節と胸骨に圧痛があります。痛みのある所に微鍼を貼ると、何とか伏臥位になれました。百会穴と湧泉穴に熱いお灸をし、安静をお願いしました。
高齢者が寝込みますと、認知症と筋力低下が往々にして進みます。訪問看護のお医者さんは「痛みがなくなるまで休むしかないね」と仰っていましたが、痛みは少しずつ和らぎ、寝たきりにならずに済みました。「今年も桜が観られました」と喜んでおられました。 古川 記