鍼は無痛に等しい微小な外傷を皮膚に与えます。ときたま、チクッとして「ごめんなさい。」なんて謝ることもありますが注射針とは比べようも無く蚊に刺された程度です。皮膚は単なる身体の包装紙ではありません。それ自体電気的性質を持ち、免疫作用を果たし、ホルモンの生成に密接に関与しています。皮膚はセンサーとして神経より先に感知して、痛み、温度は勿論のこと光まで感じ、感情としての好き、嫌いまで判断して脳としての機能まで持ち合わせています。それは受精卵から胎児となっていく過程において皮膚は中枢神経系と同じ外胚葉由来から成り立った、同じ先祖としてのルーツを持つからでしょう。皮膚の表皮の裏と表では電位差があります。ということは電池になっていることになります。しかも感情や気分によって変化します。身の毛がよだつ、冷や汗をかく、ゾクゾクする経験は誰にでもあります。老いるにしたがって皮膚はカサカサになります。皮膚の電位差は若い人に比べて落ちて電池切れになっているからです。鍼は現在は殆どステンレス針を用いています。鍼が打たれた瞬間電位差に変化が起きます。人体の60兆個の細胞は総てこの電位差を持つバッテリーを持っています。それはソマチットといわれています。鍼だけでなく微弱電流のパルスを用いますと、これが「確立共鳴」を起こして病的細胞に充電作用を起こしています。電池切れの細胞を賦活してくれる訳です。鍼は身体にとって異物の侵入です。皮膚の表皮にはケラチノサイトと呼ばれる細胞の分布があります。この細胞はサイトカインとか神経系の伝達物質や各種ホルモンまで合成していることがわかって来ました。この鍼の微小な外傷が外界からの刺激として敏感に反応して自律神経、ホルモン、免疫機能の三頭立て馬車に伝達されて走り出します。薬も飲まず、副作用も無く、高価な設備も不要で、簡単に病気を治す、自然の持って生まれた機能を巧みに利用したのがビッグな鍼の医療なのです。